2009年3月29日日曜日

世界三大仏教遺跡 誰が決めた?

アンコールワット(カンボジア)・バガン(ミャンマー)・ボロブドゥール(インドネシア)の3つが世界三大仏教遺跡と呼ばれることがあります。

私はこの3つの寺院群とも訪問する機会がありましたが、比較してみると以下のとおりです。

・歴史の古さ: ボロブドゥール(8c-)>バガン(9c-)>アンコール(12c-)
どれも比較的新しいものばかりです。法隆寺だってこれらより古いですね。アンコールがけっこう新しいことが私にとっては意外でした。

・保存状態の良さ: バガン>ボロブドゥール>アンコール
ボロブドゥールが密林の中から発見されたのが19cで、修復というより再建築ではないかと感じました。
アンコールは、カンボジア内戦の影響、技術的に稚拙な修復(フランス)のせいでいまいちです。大半の仏像は、頭部が美術品として持ち去られて無残な姿をさらしています。
バガンは、建設以来仏教徒が住み、継続的に修復されてきた寺も多いため、保存状態はとても良いです。

・見晴らしの良さ: バガン>ボロブドゥール>アンコール
バガンの一面見渡す限りの寺院群を夕暮れ時に見ると言葉を亡くします。アンコールは、代々の支配者が、その都度寺を建設していったので、統一感に欠けるし、見晴らしスポットがありません。

こうして見ると、アンコールって、大したことないように見えますが、私が一番感動したのはアンコールでした。崩れかけた寺・木の根に押しつぶされそうな寺など、個々の寺それぞれが、いい味を出しています。クメールルージュの支配のもと弾圧された宗教復活への意気込み、そして村との一体感や生活感があるのも好きな理由です。

他方、ボロブドゥールは、ちょっとがっかりでした。もてはやされているのは、ジャングルの中から近代に発見されたという発掘逸話と世界最南端という地理的な理由からでしょうか。

私が感銘を受けた順に並べると以下の順になります。
アンコール>>バガン>>ボロブドゥール

         
ところで、この「世界三大仏教遺跡」のセレクション、誰が決めたのでしょうか。

私が以前調べた限り、世界三大仏教遺跡と言って騒いでいるのは日本だけです。発信源はガイドブックだと推測しますが、世界に数ある素晴らしい仏教遺跡の中で、なぜこの3つが選ばれたのでしょうか。

欧米のガイドブックにも「世界三大仏教遺跡」のような言葉は出てきません。遺跡は一般に古いものほど価値があるのにこれら「三大」は比較的新しいものばかりで、しかも、メッカやバチカンのように世界的なセンターとして僧や信者を集めたことがないのだから当然でしょう。

アジアの人だって納得いかないでしょう。早くから仏教文化が開花し現在も熱心な仏教国(スリランカやタイ)を差し置いてイスラム教国インドネシアの遺跡が選ばれているのは心外ではないでしょうか。

ボロブドゥール程度の遺跡であれば、人類史上意義のある候補を出せそうな国や地域はほかにもあります。
・仏教発祥地であり世界中から修行僧を集めたインド
・お釈迦様誕生の国で現在も仏教徒のいるネパール
・東アジアの仏教センターであり寺の数では世界一の中国
・チベット仏教本山のチベット
・上座部仏教の要スリランカ
・カイラスを守護していたもう一つのチベット仏教本山ブータン
・世界一の立仏があったアフガニスタン
・仏像が生まれたガンダーラ(パキスタン)
・世界最西の仏教遺跡が発見されたイラン
・対GDP比寺院投資額世界一?のタイ
・仏教の世界進出・ヨーロッパの仏教国カルムイキア 
・世界最北の仏教国ブリヤート
・世界最東の仏教国で最古の木造寺を有する日本
などなど

「三大」を選定するのなら私は、仏教の3大宗派である大乗Mahāyāna・上座部仏教Theravada・チベット仏教からバランスよく選ぶ必要があると思います。
まず、はずすことのできないアンコールは大乗仏教(一部ヒンズー教)の寺院です。
上座部仏教の遺跡なら、ミャンマーのバガンよりもはるかに古い3世紀からの遺跡であるスリランカのアヌラーダプラが適切ではないでしょうか。上座部仏教はスリランカからタイやミャンマーへ伝播したとされています。
チベット仏教の代表は、ジョンカン寺などラサの寺院群で争いなしではないでしょうか。

したがって、私が独断と偏見で三大仏教遺跡群を選ぶとするならば以下の3つです。
・アンコール(カンボジア・大乗)
・アヌラーダプーラ(スリランカ・上座部)
・ラサ(チベット・チベット仏教)

参考:

*仏教の伝播 (Wikiより引用)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%B9%97%E4%BB%8F%E6%95%99
* 紀元前5世紀頃 : インドで仏教が開かれる(インドの仏教) 
* 紀元後1世紀 : 中国に伝わる(中国の仏教)
* 3世紀 : セイロン島(スリランカ)に伝わる(スリランカの仏教)
* 4世紀 : 朝鮮半島に伝わる(韓国の仏教)
* 538年 : 日本に伝わる(日本の仏教)
* 7世紀前半 : チベットに伝わる(チベット仏教)
* 11世紀 : ビルマに伝わる(東南アジアの仏教)
* 13世紀 : タイに伝わる(東南アジアの仏教)
* 13-16世紀 : モンゴルに伝わる(チベット仏教)
* 17世紀 : カスピ海北岸に伝わる(チベット仏教)
* 18世紀 : 南シベリアに伝わる(チベット仏教)




アンコールワット
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%88

バガン

ボロブドゥール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AD%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E9%81%BA%E8%B7%A1

*イランに仏教遺跡?13世紀、モンゴル人造営か…龍谷大調査
(読売新聞より引用)

壁面にくぼみが残るバルジュビ遺跡(10月22日撮影)=龍谷大提供

 龍谷大(京都市)の学術調査隊は7日、イラン北西部のバルジュビ遺跡で、「13世紀頃に造営された仏教寺院とみられる石(せっ)窟(くつ)を確認した」と発表した。この時期、イランに勢力を広げたモンゴル人によるものと推定しているが、仏像や壁画、年代を特定できる遺物は見つかっておらず、今後の調査が期待される。

 調査隊によると、石窟で九つの部屋を発見。うち2室の壁面などにくぼみ(高さ約70センチ、幅約45センチ、奥行き約25センチ)が18個あるのを確認した。形状が中国・敦煌石窟で仏像を安置した「仏(ぶつ)龕(がん)」と似ており、仏教遺跡と判断したという。

 イランでは13~14世紀、モンゴル人がイル・ハン朝を建てており、調査隊代表の入沢崇教授(仏教文化学)は「イル・ハン朝はイスラム教に改宗する前、チベット仏教を信仰しており、彼らが仏教を持ち込んだ可能性が高い」としている。

 山内和也・東京文化財研究所室長(イラン考古学)の話「今回の成果だけでは仏教寺院という確証は得られず、今後、イラン政府と協力して正式な調査を進め、さらに物証を集める必要がある」
(2008年11月8日 読売新聞)http://osaka.yomiuri.co.jp/university/research/20081108-OYO8T00281.htm

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