2009年3月14日土曜日

アイルランド 北アイルランドへ列車の旅

映画「麦の穂を揺らす風」に関連して、私が北アイルランドへ行った時のことを少し。

* 北アイルランドへの旅
2005年の秋、私はアイルランド共和国の首都ダブリンから、英国領北アイルランドの首都ベルファストまで列車に乗った。ダブリンの駅のトイレなどには、英語に加えてアイルランド語が併記されていた。アイルランド魂を鼓舞するためだろうか、それとも外国人向けの文化展示のつもりだろうか。アイルランド語なんてダブリンでは誰も話していないのに・・・。
(中略)
この列車は、アイルランド共和国→イギリスへの国際列車なのだが、切符を買うときも列車に乗るときも車内でもパスポートチェックなどは一切なかった。いつごろ列車が国境を越えるのか確かめたくて、車両内に張ってある地図を確認したが、「イギリス領(UK)」とか「北アイルランド」とか「Ulster」といった文字はどこにも出てこない。地元の人も駅員も皆「ダブリン」「ベルファスト」等と街の名前のみを言う。「アイルランドはひとつなんだ」というひとつの想いで南北が結ばれていることが強く感じられた。
本来であれば「国境」に差し掛かるあたりで、目を凝らして車窓を見ていたが、国境の標識も見つけられず、町並みや風景も全く変化なかった。
ベルファストに到着。(後略)

* 独立しない選択
北アイルランド問題がニュースが取り上げる度、いつも私は思っていた。「なぜ北アイルランドはアイルランドに合流しないのだろうか。」と。
どちらもアイルランド人が多数を占めるにもかかわらず、アイルランド共和国は独立国、北アイルランドは英国領にとどまっている。北アイルランドはプロテスタントが多く、アイルランド共和国はカトリックが多いのは知っている。けれど、他の地域ならともかくマイノリティの権利や宗教に対する配慮が制度的に整っている西欧なら、宗教がどうであれうまくやっていけるはずではないかと。

けれど世界を旅してまわるうち、政治的・宗教的・経済的・その他さまざまな理由により独立をしないという選択をとっている地域がたくさんあることに気づいた。日本民族が日本固有の土地をほぼ確保したまま独立しているという状況こそ世界で極めて珍しいのだと。(コラム、「非独立国を旅する意味」 参照)

そもそも民族ごとに国が独立するなんて非現実的なのだ。例えばナイジェリアには500の民族がある。それぞれが独立を主張したら大変なことになる。ひとつの民族が国境をまたいで居住していることも非常に多い。ナイジェリア北部のハウサ族はニジェール・ブルキナF・ガーナ・トーゴ・ベナンなどたくさんの国にまたがって居住している。
(続く)

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