2009年3月21日土曜日

パレスチナ 重信メイ 「秘密」

(アマゾンの商品紹介から引用)
日本赤軍・重信房子の娘が書いた数奇な半生

国籍を持たず、身分を隠し、英雄の娘としての衿持を抱いて生きてきたメイさんが、母のこと、仲間のこと、学生生活、恋愛……すべてを書きおろした衝撃の手記。

こういう生き方――
「日本赤軍のリーダー、国際的なテロリストとして、世界に名を轟かせた重信房子に1人の娘がいた。メイである。その生い立ちは、何万人に1人という数奇な運命を背負っていた。28歳まで国籍も持てなかった。日本では犯罪者として捕えられている母を、メイは、「この母の子に生まれたことを誇りに思う」と言い切っている。聡明で、心やさしく、感性の豊かなメイに、誰でも友人として思わず手をさしのべたくなるだろう。そういう魅力をこの手記は持っている。」 ――(瀬戸内寂聴)



インパクト強烈です。私が最も衝撃を受けたエピソードは、いつ殺されるか分からない状況で生きてきた彼女の手相には生命線がなかったけれど、日本で安全に生活できるようになってからその線が少しづつあらわれてきた、という部分でした。
無国籍のまま身元を完全に秘匿して生きてきたメイさんの28年間。これは現代の「アンネの日記」ですね。

* 日本赤軍のイメージと本作品
重信房子、「日本赤軍」、「浅間山荘事件」などほとんど知らずに成人した世代の私が初めて日本赤軍の存在を意識したのは、92年のヨルダン入国時です。当時、地球の歩き方は中東をカバーしていませんでしたが、「地球の歩き方フロンティア」という写真集が出ており、それによると、日本人旅行者は、日本赤軍との関連を疑われ入管でトラブルになる可能性があるということでした。その後日本赤軍の行ったとされる事件を知るにつけ、彼らは私の理解を超える狂信集団・テロ組織であると思うようになりました。どんな高尚な信念に基づくにせよ、暴力を伴った行動は、支持することはできません。
しかし、そんな私でも本作品は抵抗なく読み進めることができました。
本作品は、日本赤軍リーダーの娘として生まれ育ったメイさんの目から見た、レバノン、パレスチナ、日本や家族への想いが込められた自伝作品であって、日本赤軍の行動に対して共感を得られるかとは切り離して読むことができます。

* 衝撃的だった点
・大家族
日本赤軍のメンバーとその家族が寄り添いながら大家族で暮らしている様子がとても興味深いです。誰の実子かを問わず大人達が皆で面倒を見る仕組み。「お母さんの一人が」というような表現が出てきます。不自由な環境下にあることを除けば、アフリカや南米の田舎の家族のように愛情と思いやりにあふれた生活環境だったことがわかります。
・日本的な生活
彼らが異国において非常に日本的な生活を送っていたことに驚きを隠せませんでした。
卵かけごはん、お茶漬け、ご飯とみそ汁、ごちそうは雑煮と刺身という食生活。初日の出、正月、雛祭、誕生会などの伝統行事は欠かさない。「鬼ごっこ」「かごめかごめ」など古典的な日本の遊びを私より若いメイさん達がやっていたというのもすごい。極めつけは、「毎日朝6時に起きて、ラジオ体操」。これが「テロリスト」と呼ばれている彼らの日常です。
・抑圧された日常
コミュニティの外ではアラブ人として生きる。外では一切日本語を話さない(母親とも英語で)。学校の友達や彼氏にも身元を話せない。仲間の生活で日本名を使うことはなく高校生になるまで実母の名前すら知らなかったこと。想像を絶する程に抑圧された生活環境だったことがわかります。
・戦闘地域で暮らすということ
人形やぬいぐるみが落ちていても決して拾わないよう教育されて育つ(おもちゃ爆弾対策)。学校の授業で人命救助の時間があること。子供たちの将来の夢は、医者かフェイダーン(兵士となって命をささげること)。どれも驚くことばかりです。

0 件のコメント:

コメントを投稿