2009年2月1日日曜日

カメラ:アフリカ LX3と5DII 



写真: コンゴ Gemena近郊 LX3でバイクの後部座席から。

今回のコンゴ民主その他の旅には、メインでキヤノン5DII(レンズは16-35mm F2.8つけっぱなし)、予備でパナソニックLX3を持って行きました。しかし、実際に使ったのはほとんどLX3で一眼レフの5DIIを使う機会はほとんどありませんでした。

*写真が撮れない理由
理由は、今回訪問したコンゴ民主・中央アフリカ・チャドを含む中部アフリカ圏では、公の場で写真を撮ること自体が非常に難しいのです。盗難・治安を警戒していたわけではありません。現地の警察官は町中で写真を撮っているだけで職務質問・逮捕連行・賄賂要求なんでもしてきます。非番や私服の警察官・入管職員のほか、常に私服のセキュリティ(民間の警備員のことではなく公安警察を意味します。)が厳しく見張っているのです。そもそも私が観光でアフリカを訪問しているということを全く信用してくれません。「観光で訪問しているという証明書を見せろ」「招待状はどこだ」何度言われたことでしょう。

今回私はコンゴの首都キンシャサで警察に連行され、ホテルのマネージャー迎えに来てくれるまで拘束されました。コンゴ中部の町キサンガニでは、カメラを没収され、カメラの回収と撮影許可証の取得のため、毎日セキュリティのHQに通いましたが、カメラを取り戻すまでに4日かかり、許可書は結局もらえませんでした。時間がかかった理由は話すと長くなるのですが、カメラを没収された時私に同行していたホテルの従業員が、指定された土曜日にHQを訪問するのをひどく怖がったからです。人気の少ない土曜日にHQに行くと、拷問され月曜朝まで拘束されるか、高額の罰金(賄賂)を支払わなければいけないからということでした。そんな馬鹿ことはないだろうと思いましたが、ウガンダ軍・ルワンダ軍がキサンガニに攻めてきたときは、協力者と疑われた民間人がHQの建物に連れて行かれ拷問・処刑されたのだそうで、地元住民が怖がるのも無理はないのです。キサンガニはベルギー統治時代のころにあるな建物がたくさん残っていていい感じなのですが、UN兵や軍人の数も非常に多く、許可書なしで写真をとれるような雰囲気ではありませんでした。

チャドではコンゴと比べてさらに写真を撮るのが困難です。公務員のみならず、民間人でも私に写真を撮るなと警告してきます。チャド南部では、ヒッチハイク以外に交通手段がないところがあるのですが、私を拾ってくれたドライバーは、私のパスポートを確認し、ジャーナリストでないことの念を押した上で、荷台にのる他の同乗者に私が写真を撮らないよう監視させました。瞼を閉じるのも惜しいような美しい光景を荷台から眺めながら、私は悔しい気分でいっぱいになりました。けれど、去年も反政府軍のクーデターがもう少しで成功しそうになった国ですから、怪しい外国人に対して特別警戒心が強いのは全く理解できないことではありません。

観光客などめったに来ない、しかも内戦・クーデターが日常茶飯事の中部アフリカで、写真を撮るのは本当に大変です。

* カメラ没収の件、補足

キサンガニ郊外にはロンリープラネットに載っている「水量世界一の滝」がある。私が見たところ、ビクトリアの滝の方がはるかにすごかったし、ましてや南米イグアス滝にはかなわないと思うのだが、雨季のジャングルに降った雨が集まる頃は一時的にものすごい水量になるのかもしれない。このキサンガニ唯一の「観光地」で写真を撮っていた私は、軍事上機密施設である橋を撮影したということで私服のセキュリティに拘束された。グーグルアースで何でも見れる時代にいったい何を言っているのか。「罰金500ドルを払えばカメラは返しその場で釈放する」という。けれど、要求金額が法外だし、この場をしのいでも別の場所でまた同様の言いがかりをつけられるのがいやだった。そこで「あなたは私服を着ていて本物の公務員かどうか分からないのでここでは払わない。警察の本部へ連れて行け」と頼んでみた。しかるべき人に撮った写真を見せれば問題ないことが分かってくれるだろうし、今後同様のトラブルにならないよう撮影許可書を発行してもらいたいから。連れて行かれたところは、何の看板もなかったが、警察の本部ではなく、セキュリティの本部ということだった。ここは、ルワンダ・ウガンダがキサンガニに侵攻して来たときに、協力者を拷問し秘密裏に処刑するところだったらしく、地元の人が恐れていることを後から知った。

セキュリティ本部の「ボス」は、面会はしてくれたものの、金曜日の夕方だったこともあり、「翌日(土曜日)来い」、というだけだった。カメラは一時預かりになるけれど、許可書は翌日発行してくれると言うので、私は安心してホテルに帰った。土日の動きについては長くなるので省略。月曜日にセキュリティオフィスに行くと、週末に「ボス」と名乗っていた人とは違う感じのよい人が出てきた。本物のボスだ。私はまずフランス語で反省文を書かされる。すべてボスが口頭で読み上げた文章を書きとるだけ。聞き取れなくて適当に書いたところも多いが、その点はボスが上から書き直してくれた。付き添いのJも、外人に付き添っていながら写真撮影をとめなかったことに対する反省文を書かされる。この時点で金は一切払っていないがカメラは返してくれた。デジカメの写真はすべて確認されたが、消去を命じたのは橋がもろに移っている一枚だけですんだ。ボスは、まだ外国人観光客が来ていた頃の平和なコンゴ(ザイール)をよく知っているようで、ケニアを例に挙げて観光と言う産業が地元にもたらす利益がいかに大きいかをJに説いていた。外国人観光客には親切に接してあげなさい、というニュアンスが感じ取れた。お願いしていた許可証は、作成にまだ時間がかかるので夕方6時頃ボス自らが私の宿泊先まで届けてくれることになった。これは、週末と違って他の職員が大勢いる平日の役所でおおっぴらに「手数料」を要求することがはばかられるからだと思うが、その晩雨が降り停電したためかボスは結局宿にやってこなかった。というわけで、4日間も待たされたにもかかわらず、結局私が写真撮影許可証を受け取ることはなかった。

* 写真を撮る理由
私はプロの写真家でもジャーナリストでもない私が旅先でどうしても写真を撮りたい理由はいくつかあります。まず、1)自分の旅の記録目的です。写真を撮っておけばどこへ行き誰と会い何をしたという記憶はいつまでも鮮明に残ります。次に、2)現地の人とのコミュニケーション。デジカメをあまり見たことのない中部アフリカの人々とは、撮影した画像を液晶で見せることがコミュニケーションや信頼関係の構築に大いに役立ちます。そして3)再訪時のお土産づくり。その地を再訪したときに出会った人々に現像した写真をあげるととても喜んでもらえるます。

* アフリカ旅行に適したカメラ
一眼レフの利点はその1)画質、2)大きなボケ(特にポートレート向き)、3)高速レスポンスの点に集約されると思いますが、一方その大きさ・重さは1)持ち運びの負担になるだけではなく、2)周囲の注目・警戒を招きます。観光しやすいアフリカ南部・東部・北部はともかく、この「周囲の注目・警戒を招く」という点で、中部・西部アフリカで一眼レフを使うのはとても困難です。
では大きく重い一眼レフの代わりに、コンパクトデジカメで満足できるのか。これが問題です。私にとってカメラは、記録ツールなので、画質は最高でなくても、また背景がボケなくても問題はありません。
しかし、レスポンスが悪いのは困ります。初めてアフガニスタンに行ったとき、車窓の風景があまりに美しくて、走っている車の中からコンパクトデジカメでずーっと連写していたのですが、レスポンスが悪いため、どれもブレブレで全く使えませんでした。これは悔しかったです。また、現地の人と会話しながらシャッターを切るとき、レスポンスが悪いと楽しい瞬間を記録し損ねてしまいますが、それは厭です。
今回いろいろ悩んで持っていったLX3は、走っているバイクの後部座席からシャッターを切っても結構よく映っていたし、現地の人との楽しい瞬間も結構残せたと思います。明るいレンズのおかげで(F2)レスポンスがよいLX3は、アフリカ旅行に最適かも知れません。もう大きくて重い一眼レフを持っていくのはやめようかなと思案中です。

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